今日からオレは、管工事業者になる。

管工事業者への道程とその業界の未来について

建設業界の人手不足×AIで対処できるのか

2020東京オリンピックを皮切りに、インバウンド増に伴うホテル建設、高度成長期に激増した社会インフラの老朽化、補修・改修需要、リニア新幹線、災害多発による国土強靱化工事需要

など、建設業界は大きく状況が好転しています。

 

しかしその一方で 「人材不足」、「原材料の高騰」という問題が浮き彫りになっています。特に人材不足は、労働集約型で人材が揃わないと仕事自体が成立しない建設業界にとって、大きな問題となっています。

 

そんななか、国も様々な対策を打ち出しています。特に「i-Construction」というプロジェクトで、AIやドローンなどの新しいテクノロジーを使った「ICT土木」を提唱しています。

 

ICTとは、「Information and Communication Technology」の略で、情報通信技術を表します。国はこのプロジェクトで、IT化がなかなか進まない建設業界の時計の針を一気に進めようとしています。新技術の導入で建設現場の省力化や効率化を進め、人材不足対応と魅力的な職場づくりを促進することが狙いです。

 

ICTのなかでも、特に「AI/人工知能」に対する期待は大きいようです。重機や建機にAIを搭載したり、写真を解析したりと、さまざまな用途が想定されています。

数年前まで、AIは期待されるというより、「人間が仕事を奪われるかもしれない」という、恐ろしい存在でした。

 

現在、AIが得意な分野は下の3つです。

1、識別
音声、画像、動画、言葉の構造を把握して、内容を判断したり、過去データとの関連を割り出したりといったことが可能です。

<建設会社で使える技術>
・工事現場のリアルタイム動画から異変を瞬時に見抜く
・過去の建物や室内の白黒写真の色を判断する
・顧客の現在の家の写真からインテリアの好みを把握する
・電話の言葉から相手の質問や要望などを割り出す

2.予測
データを元に、将来予測が可能です。相関関係から割り出す方法が主流ですが、人間であれば相関を10も立てれば一苦労ですが、AIなら100でも1000でも計算できます。

<建設会社で使える技術>
・過去の工事スケジュールから、今回の工事の工期を予測する
・顧客の好みとマッチングする内装材や家具を予測する
・Web広告の過去の実績から、最も効率的な出稿方法を予測する

3.実行
目的に適った最適なアウトプットを実行できます。

<建設会社で使える技術>
・顧客の質問に対してチャットで(合成音声で、メールで)返答する
・建機を自動で操作する
・Web広告のオークションで割安な時に入札する

 

実際に建設業界で活用されているAI技術はまだ大手ゼネコンが多いですが、現場に入ってくることでより身近になりそうです。


国交省の「i-Construction」でも重要視されている「AIを使った3次元(3D)モデリング」技術で先頭に立っているのが大手ゼネコンの鹿島です。AIとBIMを活用し、建設物の仕様や敷地、コストや工期などの情報を入力すると、数分で条件に合った3次元の施工計画を複数パターンで提案するシステムを開発中で、数年での実用化を目指しているそうです。

施工計画の作成は現在、人間が1週間程度かけて作成しているとのことで、AIなら数分と大幅に短縮できます。複数案提案されるため、最後に人間の目を通すことでデータに表れない事情も考慮することが可能です。

BIMとは、Building Information Modelingの略で、建設物の3次元デジタルモデルに、コストや工程管理などの周辺情報を付加するシステムです。今回のAIによる施工計画案作成システムは、BIMで収集した施工データの蓄積によって可能になりました。鹿島では、2017年4月にはBIMの専門会社も設立し、中小建設会社に最新システムを提供しています。

 

大林組はAIを利用して内装工事の進み具合を判定する「工程認識AI」を開発中です。工事現場で撮影している記録写真を解析し、写っている資材の完成割合などから、工程のどこまで進んでいるかという進捗状況が判定されます。

たとえば大型マンションのように同時に多くの工事が平行して行われる物件の管理が楽になりそうです。

撮影をドローンやロボットで行えば、見回りや撮影の手間もなくなり、検査を無人化することも可能になりそうです。

この技術は、AIに工事中の写真、完成した写真、資材の写真などを解析させることで、AI自体が工事の最初から完成までの状況を学習し、各状態に特有の法則性やルール、パターンなどを見つけ出す、ディープラーニングを行なうことで可能になりました。

熟練の技が必要なシールドマシンをAIで操作
清水建設はAIを活用して、トンネルの掘削で活躍するシールドマシン(岩盤を砕く超大型のドリルのような機械)のオペレーションを行なうソフトの開発を進めています。

これまでは熟練のオペレーターのノウハウとテクニックで行われていたのですが、熟練工の減少と生産性向上を目指してAI化に取り組んでいるそうです。

具体的には、熟練オペレーターの操作を記録した膨大なビッグデータをAIで行動分析し、熟練オペレーターの操作をソフトとして再現することを目指しています。実用化も遠くない将来のようです。


AIによって、人間が最終判断を下すまでの作業や管理、機械の操作といった部分はAI化が進んでいきそうです。営業のように、AIに代替されにくい職種でも、AIが搭載されたMA(マーケティングオートメーション)を通じて契約前の基礎的なコミュニケーションを自動化するなど、効率化が進んでいきそうです。

AIによるサポートを上手に使い、マンパワーを適正配置することで、人材不足を緩和することが今後の課題と言えそうです。